タコピーの原罪 - 2022.03.29 Tue
ジャンプ+に短期連載されていた『タコピーの原罪』(タイザン5作)が
去る3月25日に最終回を迎えた。
SNSで相当な話題を呼んだらしい。
かく言う私も毎週、泣きながら読んでいた(笑)
☆★☆★☆★☆★☆★ネタバレあり★☆★☆★☆★☆★☆
作者言うところの「陰湿なドラえもん」。
土管が積まれた空き地から物語が始まったこと
タコピーが出逢った地球人の女の子の名前が「しずかちゃん」であること等が
既にそれを示唆している。
でも、ドラえもんの頃は、現代に比べればまだ平和でのんびりした世界。
2016年の『タコピー』の世界はもっと殺伐としている。
読者である私達が生きている世界、それも6年前だから
私達がしっかり生きてきた世界。
どっぷりと浸かって、慣れ親しんで、当たり前に受け止めている世界が
実はドロドロとした深い闇に覆われていることを突き付けられる。
タコピーはハッピー星からハッピーを広めるためにやって来た宇宙人。
ドラえもんよりも無邪気というか、(言ってしまえば)無垢で愚かなタコピーは
言葉の向こうにある人の気持ちが読めない。
しずかちゃんがあまり笑わない…ということだけは分かるけど
その理由を察することができない。
読者である私達には、しすかちゃんの顔の曇りが見える。
顔だけでなく、着ているTシャツがヨレヨレで薄汚れていることや
ランドセルやノート等もボロボロで悪口が書きなぐられているのも目に入る。
家に帰れば、部屋の中は乱雑。
お父さんは今はいない…お母さんは今日は「同伴」…という言葉。
彼女が置かれている状況が察せられる。
こうした違いが説明なしで絵だけで示される作りが面白いし上手いと思う。
タコピーが出す道具はどれも、ドラえもんの道具の様に喜ばれはしない。
本来の使い方をされず、寧ろ不幸を呼ぶきっかけになってしまう。
第1話にして最悪の事態になり…
ビビリひじゅには読むのをやめようかと思ってしまったよ。
やめなかったけどね(笑)
ジャンプ+はちょくちょくチェックする大好きなアプリだけど
全ての作品を読んでいるわけではないし、中断したものも少なくない。
ツマラナイから、乗らないから…という理由が多いけど
内容が暗くて辛いから読まない選択をしたものものある。
『タコピー』は暗くて辛いんだけど、何故か惹きつけられた。
タコピーはイライラするほどバカなんだけど
“悪”に対して全くの無知であること、それだけに純粋であることが
伝わってくるから、そこが愛しい。
「お前は能天気で馬鹿でごみだけど優しい」
東くんの言葉そのものなんだな。
絵や空気で語る作品なので、東くんは丁度良い感じの解説役でもあったな。
上記の台詞を言う第14話では
「もしも次の僕に会うことがあったら言ってやってくれよ
兄貴とケンカでもしてみろって」
と言って、自分にとっての救いの道に気付いていることを示唆してる。
「助けてあげようなんて思うのが違ったんだ」
とも言って、タコピーに気付きを与えている。
最終話でタコピーがやっと辿り着いた
「おはなしがハッピーをうむんだっピ」
という結論に繋がっている。
2016年と2022年の、しずかちゃんとまりなちゃんを見て
「なんで悪い子なのに、なんで良い子なのか」と混乱するタコピーに
「そりゃいいとこも悪いとこもあるだろ」と東くんは答える。
本当にその通りの物語だったと思う。
この第14話と
しずかちゃんが初めて心情を吐露する第15話が秀逸だと思う。
最終話は「拍子抜け」という感想を持つ人もいるみたいだけど
ひじゅに的には非常に上手く収束させたな、と思えた。
聖書を当てはめて考察する人が多かったらしいけど
少なくとも、最後のタコピーの決断はイエス・キリストになぞらえられると思う。
ドクダミの花言葉は「自己犠牲」というのも、しっかり当て嵌まっていたな。
つーか、やはり、あれは伏線だったのかもな。
過去に戻ったのに、記憶はうっすら残っている…という設定も
ひじゅに的には納得できたし、そこが救いに繋がるところに感動した。
もっとも、そうでなければ、タコピーの存在が無駄だった…という結論になって
あんまりな終わり方になっちゃうからな(笑)
タイムパラドックスを扱った物語って
パラレルワールドが無限に作られてしまうものと
ひとつの世界で上書きされていくものとあるけど
個人的には後者の方が納得できる。
『タコピー』は明らかに後者なので、すんなり受け入れることができたし
加えて、消されたはずの記憶が微かに残っているところは
タコピーの「ハッピー力」によるものだと素直に感動できる。
世界は何も変わらない。
しずかちゃんの家族も、まりなちゃんの家族も壊れたまま。
東くんの家族も、親に関してはきっと相変わらずなまま。
でも、しずかちゃんとまりなちゃん、東くんとお兄さんは
「おはなし」で心通じ合えた。
東くんは、しずかちゃんの中に母親を見て歪んだ“依存”に陥るのでなく
普通の友達ができた。
細やかな様でいて、とてつもなく大きな変化。
この結末は素晴らしいと思う。
タコピーの微かな記憶に共に涙を流した後
しずかちゃんとまりなちゃんが夜道を歩くシーン。
少しばかり距離はあいているけれど、並んで歩いていて
互いの手が、触れ合うまでは行ってないけど互いに向けて伸ばしている。
タコピーが最初に訪れた2022年の世界で、まりなちゃんが
東くんの方に手を伸ばしたシーンを彷彿とさせる。
こういう演出が上手いと思う。
☆楽天もう…何がなんだか日記もヨロシクです☆

キーホルダー
上巻
下巻
去る3月25日に最終回を迎えた。
SNSで相当な話題を呼んだらしい。
かく言う私も毎週、泣きながら読んでいた(笑)
☆★☆★☆★☆★☆★ネタバレあり★☆★☆★☆★☆★☆
作者言うところの「陰湿なドラえもん」。
土管が積まれた空き地から物語が始まったこと
タコピーが出逢った地球人の女の子の名前が「しずかちゃん」であること等が
既にそれを示唆している。
でも、ドラえもんの頃は、現代に比べればまだ平和でのんびりした世界。
2016年の『タコピー』の世界はもっと殺伐としている。
読者である私達が生きている世界、それも6年前だから
私達がしっかり生きてきた世界。
どっぷりと浸かって、慣れ親しんで、当たり前に受け止めている世界が
実はドロドロとした深い闇に覆われていることを突き付けられる。
タコピーはハッピー星からハッピーを広めるためにやって来た宇宙人。
ドラえもんよりも無邪気というか、(言ってしまえば)無垢で愚かなタコピーは
言葉の向こうにある人の気持ちが読めない。
しずかちゃんがあまり笑わない…ということだけは分かるけど
その理由を察することができない。
読者である私達には、しすかちゃんの顔の曇りが見える。
顔だけでなく、着ているTシャツがヨレヨレで薄汚れていることや
ランドセルやノート等もボロボロで悪口が書きなぐられているのも目に入る。
家に帰れば、部屋の中は乱雑。
お父さんは今はいない…お母さんは今日は「同伴」…という言葉。
彼女が置かれている状況が察せられる。
こうした違いが説明なしで絵だけで示される作りが面白いし上手いと思う。
タコピーが出す道具はどれも、ドラえもんの道具の様に喜ばれはしない。
本来の使い方をされず、寧ろ不幸を呼ぶきっかけになってしまう。
第1話にして最悪の事態になり…
ビビリひじゅには読むのをやめようかと思ってしまったよ。
やめなかったけどね(笑)
ジャンプ+はちょくちょくチェックする大好きなアプリだけど
全ての作品を読んでいるわけではないし、中断したものも少なくない。
ツマラナイから、乗らないから…という理由が多いけど
内容が暗くて辛いから読まない選択をしたものものある。
『タコピー』は暗くて辛いんだけど、何故か惹きつけられた。
タコピーはイライラするほどバカなんだけど
“悪”に対して全くの無知であること、それだけに純粋であることが
伝わってくるから、そこが愛しい。
「お前は能天気で馬鹿でごみだけど優しい」
東くんの言葉そのものなんだな。
絵や空気で語る作品なので、東くんは丁度良い感じの解説役でもあったな。
上記の台詞を言う第14話では
「もしも次の僕に会うことがあったら言ってやってくれよ
兄貴とケンカでもしてみろって」
と言って、自分にとっての救いの道に気付いていることを示唆してる。
「助けてあげようなんて思うのが違ったんだ」
とも言って、タコピーに気付きを与えている。
最終話でタコピーがやっと辿り着いた
「おはなしがハッピーをうむんだっピ」
という結論に繋がっている。
2016年と2022年の、しずかちゃんとまりなちゃんを見て
「なんで悪い子なのに、なんで良い子なのか」と混乱するタコピーに
「そりゃいいとこも悪いとこもあるだろ」と東くんは答える。
本当にその通りの物語だったと思う。
この第14話と
しずかちゃんが初めて心情を吐露する第15話が秀逸だと思う。
最終話は「拍子抜け」という感想を持つ人もいるみたいだけど
ひじゅに的には非常に上手く収束させたな、と思えた。
聖書を当てはめて考察する人が多かったらしいけど
少なくとも、最後のタコピーの決断はイエス・キリストになぞらえられると思う。
ドクダミの花言葉は「自己犠牲」というのも、しっかり当て嵌まっていたな。
つーか、やはり、あれは伏線だったのかもな。
過去に戻ったのに、記憶はうっすら残っている…という設定も
ひじゅに的には納得できたし、そこが救いに繋がるところに感動した。
もっとも、そうでなければ、タコピーの存在が無駄だった…という結論になって
あんまりな終わり方になっちゃうからな(笑)
タイムパラドックスを扱った物語って
パラレルワールドが無限に作られてしまうものと
ひとつの世界で上書きされていくものとあるけど
個人的には後者の方が納得できる。
『タコピー』は明らかに後者なので、すんなり受け入れることができたし
加えて、消されたはずの記憶が微かに残っているところは
タコピーの「ハッピー力」によるものだと素直に感動できる。
世界は何も変わらない。
しずかちゃんの家族も、まりなちゃんの家族も壊れたまま。
東くんの家族も、親に関してはきっと相変わらずなまま。
でも、しずかちゃんとまりなちゃん、東くんとお兄さんは
「おはなし」で心通じ合えた。
東くんは、しずかちゃんの中に母親を見て歪んだ“依存”に陥るのでなく
普通の友達ができた。
細やかな様でいて、とてつもなく大きな変化。
この結末は素晴らしいと思う。
タコピーの微かな記憶に共に涙を流した後
しずかちゃんとまりなちゃんが夜道を歩くシーン。
少しばかり距離はあいているけれど、並んで歩いていて
互いの手が、触れ合うまでは行ってないけど互いに向けて伸ばしている。
タコピーが最初に訪れた2022年の世界で、まりなちゃんが
東くんの方に手を伸ばしたシーンを彷彿とさせる。
こういう演出が上手いと思う。
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