fc2ブログ
topimage

2012-12

火の魚 - 2012.12.30 Sun

いよっ、オノマチ!


遂に観た。
これは素晴らしい。
「どうしよう?」と思うくらい。
「どうしてくれんのよ!?」と叫びたくなるくらい。


これは、一言で表すならラブストーリー。


死を意識したことで故郷の島に籠り
身体的には“健康的”な生活を送りながらも
精神的には死に囚われ
その歪みが作品の低下という形で表れている老作家と

暗い色のスーツに身を包んだ
固い意志を秘めている様に見える女性編集者の。


冒頭、赤い金魚と黒い金魚が会話を交わしている様な仕掛けで
地元民の軽い噂話を通して作家の状況が示される。

それから作家のモノローグへ移行。
赤い花束を抱いた作家が病院の階段を上って行くシーンは
上方が白い光で透けていて、まるで天国への階段の様だった。


ここで“”と“”のイメージが提示される。


作家が女性編集者に興味を持ったのは
彼女が砂浜に海藻で描いた龍の絵がきっかけだった。

その後、彼女が作り演じる影絵の紙芝居を通して
作家は彼女に好意を持ち始めた自分に気付き、戸惑う。

それから、彼女が魚拓の技術を持っていることを知り
自分が可愛がっていた赤い金魚の魚拓を作らせる。

全てに(いわゆる)芸術が絡んでいるのが面白いし説得力があるな、と思う。
直接的な言葉や説明がなくても、互いの心に流れ合うものが見える。


…淡々とした語り口。
作家と女性編集者の辛辣だったりユーモアが漂っていたりする会話。


作家が描く官能小説の登場人物@金魚娘は
赤いミニスカートから伸びる足の美しさを誇っている。
暗い色のスカートから伸びるオノマチの足は綺麗だけど逞しい。

一見クールで
知的で落ち着きがあって
適度に距離を置いている印象のある
上品な敬語を纏い
オノマチの表情が微妙に変化する。

金魚の魚拓を取るところは息が詰まる様だった。

そして、病院の廊下で作家を見上げるオノマチの表情…
凄いなあ…
本当に凄い女優だと思う。


勿論、原田芳雄も素晴らしい。

聞くところによると、撮影時、彼は既に癌で余命宣告されていたそうだ。
その状態で、この役柄を演じるとは…役者は凄いなあと思う。

フレディ・マーキュリーが『The Show Must Go On』を歌う様なもの?
↑ちょっと例えが変?


ほとんど、この2人だけで構成されている。
そういえば、同じ渡辺あや脚本の『その街のこども』も
ほとんど、2人だけで進行するロードムービーだった。

こちらも、場所はあまり動かないけど
精神のロードムービーと言えるかもね。


まさに2人が火花を散らし
その火花でお互いを照らし合い
この上なく輝いた作品に仕上げてくれたと思う。



「お前が持って生まれ、そしてお前なりに守り通すであろうその命の長さに
 俺が何の文句をつけられよう」

この台詞は凄く切ない。
これを聞いた時点で涙が溢れた。


「心配するな、俺とて後に続くのにそんなに時間がかからんさ」

いずれ訪れる“死”を遂に受け入れることが出来たことを
示しているんだよね?


「だが、それでももし叶うなら、今生何処かでまた逢おう」

そしてその上で、“生”を見つめている。
“死”そのものというより、“死”への恐れという呪縛から
抜け出せた時に“生”への希望や意欲を取り戻せる。


「タバコ吸いてぇ~」

最後にこういう叫びで終わらせる、このユーモア感覚が優しくて良いね。
彼女が指摘した作品の低迷が吹っ切れたことの証だよね。


最初は“老い”を強調している様子だったけど
それは隠れ蓑に過ぎない。
彼の孤独を表面的に説明するための。

“死”も“生”も年齢や立場には関係ない。

鮒や鯵と金魚を分けるのは、やはり“赤”なんだと思う。
で、多分、“赤”というのは表面の色ではなくて
互いの間に生じる火花なんだと思う。





2009年/日本
原作:室生犀星『火の魚』
脚本:渡辺あや
演出:黒崎博
出演:原田芳雄(村田省三)、尾野真千子(折見とち子)





☆楽天もう…何がなんだか日記もヨロシクです☆
楽天バナー

☆映画&ドラマ感想は「REVIEWの部屋」に纏めてあります☆
やっくんち
やっくんち






NEW ENTRY «  | BLOG TOP |  » OLD ENTRY

プロフィール

ひじゅに

Author:ひじゅに
ひじゅに

朝ドラを中心にドラマや映画の感想、
K-POP歌詞訳やイラスト、
猫や食べ物の話題など
何だかんだと書いています。
HNの由来は韓国のロッカー
ムン・ヒジュン(笑)
楽天ブログで何年かやってきましたが、
今後こちらと並行して行くつもりです。
「やっくん」名でHPもやってます。
どうぞヨロシク☆

★楽天ブログ
もう…何がなんだか日記
楽天バナー

★HP(ブログ各記事のINDEXも)
やっくんち
やっくんち

最新記事

全記事表示リンク

全ての記事を表示する

カテゴリ

らんまん (25)
舞いあがれ! (19)
ちむどんどん (18)
カムカムエブリバディ (14)
おかえりモネ (9)
おちょやん (93)
エール (186)
スカーレット (153)
相棒 (127)
なつぞら (156)
まんぷく (151)
わろてんか (152)
半分、青い。 (154)
ひよっこ (157)
べっぴんさん (152)
とと姉ちゃん (154)
あさが来た (157)
まれ (156)
マッサン (150)
ちゅらさん (8)
花子とアン (156)
ごちそうさん (151)
あまちゃん (156)
純と愛 (151)
梅ちゃん先生 (157)
カーネーション (151)
おひさま (156)
NHK朝ドラ-2 (74)
朝ドラについて考える (24)
韓国映画 (31)
香港・中国映画 (11)
日本映画 (14)
欧米映画 (10)
007シリーズ (14)
その他の映画 (1)
八重の桜 (53)
平清盛 (50)
陽だまりの樹 (11)
JIN-仁- (11)
ドラマ-1- (32)
ドラマ2 (7)
ドラマ-3- (17)
ドラマ-4- (4)
単発ドラマ (9)
欧米ドラマ (20)
韓国ドラマ‐1‐ (3)
MV&歌詞訳(主にヒジュン) (3)
MV&歌詞訳(パク・ヒョシン) (5)
MV&歌詞訳(QUEEN) (16)
MV&歌詞訳(エド・シーラン) (11)
MV&歌詞訳(その他) (28)
レトルト&キヨ その他 (1)
お気に入り動画 (3)
K-POP(主にヒジュン) (1)
食べ物・飲み物 (73)
動物 (31)
イラストetc. (3)
風景、植物 (4)
日常あれこれ (61)
夢 (1)
バトン (8)
鬼滅の刃 (2)
小説&マンガreview (5)
アニメ (12)
韓国ドラマ-2- (2)
ドラマ以外のTV番組&DVD等 (1)
ラーメンetc. (6)

月別アーカイブ

フリーエリア

検索フォーム

リンク

このブログをリンクに追加する

RSSリンクの表示

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR