光州5・18 - 2011.05.15 Sun
今日、弟が殺された…俺の目の前で
光州事件について知ったのは『ペパーミント・キャンディー』(イ・チャンドン監督)だった。
主人公が人生を狂わすきっかけとなる出来事の背景として使われていた。
「遠くて近い国」という、よく聞く枕詞を出す以前に
自国の歴史にさえ疎い私には、ほんの数十年前とはいえ韓国で起きたこの事件は
まさに寝耳に水、衝撃としか言えないものだった。
それでも詳しい事は分からないまま無駄に年月が過ぎ、
今こうして、正面から光州事件を扱った初めての映画『光州5・18』に出逢った。
【光州(クァンジュ)事件】
1980年5月18日から27日
全斗煥(チョン・ドファン)軍政下にあった韓国の光州市で
民主化運動を軍が武力弾圧した事件。
原題『華麗なる休暇』は鎮圧軍の作戦名だそうだ。
総勢2万人以上の大韓民国国軍が、この作戦に動員され
対スパイ戦に準じた各種弾薬を装備、
航空機(武装ヘリコプター含む)30機、戦車7台、装甲車17台、車両282台が使用された。
死亡207人、負傷者2392人、その他の犠牲者987人。
(尤もこれは推定値で、正確な集計は現在まで発表されていない)
韓国では大ヒットを飛ばしたらしい。
日本ではイ・ジュンギ出演作ということで少しは観客を呼べたのかな?
架空の人物を主役に据え娯楽作品として作り上げたことに批判的な意見を見かけた。
私は、娯楽作品であることに意味があると思う。
ドキュメンタリーは正確かつ詳細な情報を与えてくれるかもしれないけど
娯楽作品は私の様な無知な観客にも、社会的な事柄に興味を持たない観客にも
こうした事実があったのだ、ということそのものを
当時の人々が抱いた(かもしれない)感情を
ダイレクトに心に突きつけてくる。
主人公ミヌは架空の人物。
両親を亡くし、タクシー運転手をして高校生の弟を養っている。
恐らく、高い教育は受けていない(ていうか受ける余裕はなかっただろう)。
あまり頭は良くないし、不器用だし、好きな女性@シネにどう近づいて良いのかも分からない。
ちょっと寅さんを大人しくした感じ(笑)
困っているお婆さんを只で乗せてやる様なお人好しで
勉強家の弟を大学に入れてやるために懸命に働いている。
そんな彼が理不尽な事態に巻き込まれ、弟を殺され、
やがて自らの意思で戦うことになる。
他にも、息子を殺された父親、友を殺された学生、教え子達を殺された教師がいる。
政治とか思想とかどーのこーの言う前に、愛する者達を奪われた純粋な怒りで立ち上がる
市井の人々を中心に描いているところが心に響く。
デモの参加者だけでなく、たまたま通りかかった無関係の人々さえも
追い回され殴られ死者も続出するというシーンもショッキングだけど、
戒厳令を解除するという発表に喜び、国への信頼感を込めて国歌斉唱する人々が
その国歌がまだ鳴り響いている中で射殺されるところなんて、もう言葉にもならない。
女学生も、幼い子供を庇った父親も、
救急車で怪我人を運ぼうとした医者までもが容赦なく射殺される。
銃弾が飛び交う中、弟に駆け寄るミヌが全く撃たれないのはツッコミどころ?
でも、颯爽とした走り方ではなく、
口を開きオロオロした表情でオタオタと出て行く姿に泣けるんだよ。
そんな彼が戦いに身を投じることにより、だんだん精悍になっていくんだけどね。
だからってカッコイイところを見せるわけじゃない。
皆を導く元軍人フンスでさえ、最後はあっけない。
ラストは結婚式の記念写真を撮る幸せそうな風景。
花婿はミヌ。
列席者は戦いで亡くなった人々。
皆が明るく笑っている中で、花嫁のシネだけが暗い表情で突っ立っている。
たった一人生き残った彼女は、これだけのものを失い
これだけのものを抱えながら、生き続けていかなければならない。
何とも言えない思いを残す終わり方だった。
人間ドラマの部分は、ベタっちゃーベタなんだけどね
でも、ベタだから庶民の心がよく表れていると思う。
何も知らなかった私は、今も何もできないまま
ひたすら号泣していたのさ。
『華麗なる休暇』 2007年/韓国
監督:キム・ジフン
出演:キム・サンギョン(ミヌ)イ・ジュンギ(ジヌ)
アン・ソンギ(フンス)イ・ヨウォン(シネ)
☆楽天もう…何がなんだか日記もヨロシクです☆

☆ドラマ&映画感想は「REVIEWの部屋」に色々置いてあります☆

やっくんち
光州事件について知ったのは『ペパーミント・キャンディー』(イ・チャンドン監督)だった。
主人公が人生を狂わすきっかけとなる出来事の背景として使われていた。
「遠くて近い国」という、よく聞く枕詞を出す以前に
自国の歴史にさえ疎い私には、ほんの数十年前とはいえ韓国で起きたこの事件は
まさに寝耳に水、衝撃としか言えないものだった。
それでも詳しい事は分からないまま無駄に年月が過ぎ、
今こうして、正面から光州事件を扱った初めての映画『光州5・18』に出逢った。
【光州(クァンジュ)事件】
1980年5月18日から27日
全斗煥(チョン・ドファン)軍政下にあった韓国の光州市で
民主化運動を軍が武力弾圧した事件。
原題『華麗なる休暇』は鎮圧軍の作戦名だそうだ。
総勢2万人以上の大韓民国国軍が、この作戦に動員され
対スパイ戦に準じた各種弾薬を装備、
航空機(武装ヘリコプター含む)30機、戦車7台、装甲車17台、車両282台が使用された。
死亡207人、負傷者2392人、その他の犠牲者987人。
(尤もこれは推定値で、正確な集計は現在まで発表されていない)
韓国では大ヒットを飛ばしたらしい。
日本ではイ・ジュンギ出演作ということで少しは観客を呼べたのかな?
架空の人物を主役に据え娯楽作品として作り上げたことに批判的な意見を見かけた。
私は、娯楽作品であることに意味があると思う。
ドキュメンタリーは正確かつ詳細な情報を与えてくれるかもしれないけど
娯楽作品は私の様な無知な観客にも、社会的な事柄に興味を持たない観客にも
こうした事実があったのだ、ということそのものを
当時の人々が抱いた(かもしれない)感情を
ダイレクトに心に突きつけてくる。
主人公ミヌは架空の人物。
両親を亡くし、タクシー運転手をして高校生の弟を養っている。
恐らく、高い教育は受けていない(ていうか受ける余裕はなかっただろう)。
あまり頭は良くないし、不器用だし、好きな女性@シネにどう近づいて良いのかも分からない。
ちょっと寅さんを大人しくした感じ(笑)
困っているお婆さんを只で乗せてやる様なお人好しで
勉強家の弟を大学に入れてやるために懸命に働いている。
そんな彼が理不尽な事態に巻き込まれ、弟を殺され、
やがて自らの意思で戦うことになる。
他にも、息子を殺された父親、友を殺された学生、教え子達を殺された教師がいる。
政治とか思想とかどーのこーの言う前に、愛する者達を奪われた純粋な怒りで立ち上がる
市井の人々を中心に描いているところが心に響く。
デモの参加者だけでなく、たまたま通りかかった無関係の人々さえも
追い回され殴られ死者も続出するというシーンもショッキングだけど、
戒厳令を解除するという発表に喜び、国への信頼感を込めて国歌斉唱する人々が
その国歌がまだ鳴り響いている中で射殺されるところなんて、もう言葉にもならない。
女学生も、幼い子供を庇った父親も、
救急車で怪我人を運ぼうとした医者までもが容赦なく射殺される。
銃弾が飛び交う中、弟に駆け寄るミヌが全く撃たれないのはツッコミどころ?
でも、颯爽とした走り方ではなく、
口を開きオロオロした表情でオタオタと出て行く姿に泣けるんだよ。
そんな彼が戦いに身を投じることにより、だんだん精悍になっていくんだけどね。
だからってカッコイイところを見せるわけじゃない。
皆を導く元軍人フンスでさえ、最後はあっけない。
ラストは結婚式の記念写真を撮る幸せそうな風景。
花婿はミヌ。
列席者は戦いで亡くなった人々。
皆が明るく笑っている中で、花嫁のシネだけが暗い表情で突っ立っている。
たった一人生き残った彼女は、これだけのものを失い
これだけのものを抱えながら、生き続けていかなければならない。
何とも言えない思いを残す終わり方だった。
人間ドラマの部分は、ベタっちゃーベタなんだけどね
でも、ベタだから庶民の心がよく表れていると思う。
何も知らなかった私は、今も何もできないまま
ひたすら号泣していたのさ。
『華麗なる休暇』 2007年/韓国
監督:キム・ジフン
出演:キム・サンギョン(ミヌ)イ・ジュンギ(ジヌ)
アン・ソンギ(フンス)イ・ヨウォン(シネ)
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